2008年09月23日

宮沢賢治 ポラーノの広場

asida1.gif  宮沢賢治  ポラーノの広場

久々の宮沢賢治、本の紹介です。

表現がとっても良いですね。

きれいな文章です。

最初の部分は、こんな感じです。

わたくしは、モリーオ市の博物局に勤めて居りました。
十八等官でしたから役所のなかでも、ずうっと下の方でしたし
俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で
好きなことでしたから、わたくしは毎日愉快にはたらきました。

そのころ、モリーオ市では競馬場を植物園にこしらえ直す
というので、その景色のいいまわりにアカシヤを植え込んだ
広い地面が、建物のついたまま、わたくしどもの役所の方へ
まわってきました。
わたくしは幸運にもひとりで住むことになりました。

そして、黒い革のかばんへすこしの書類や雑誌を入れ、
靴もきれいにみがき、並木のポプラの影法師を大股にわたって
毎日、役所へ出て行くのでした。

あのイーハトーヴォのすきとおった風、
夏でも底に冷たさをもつ青いそら、
うつくしい森で飾られたモリーオ市、
郊外のぎらぎらひかる草の波。


またそのなかでいっしょになったたくさんのひとたち、
ファゼーロとロザーロ、羊飼のミーロや、顔の赤いこどもたち、
地主のテーモ、山猫博士のボーガント・デストゥパーゴなど、
いまこの暗い巨きな石の建物のなかで考えていると、
みんなむかし風のなつかしい青い幻燈のように思われます。

では、わたくしはいつかの小さなみだしをつけながら、
しずかにあの年のイーハトーヴォの五月から十月までを
書きつけましょう。





  宮沢賢治  ポラーノの広場

posted by 龍 聖 (りゅうせい) at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | この本! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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